ラッキーいとうの「お気楽サンデー」ブログ

たんなん夢レディオで毎月第4日曜日に放送の「お気楽サンデー」の記録です。次回放送は9月26日です。(12:00~13:00)です。

ダム水没の村の原風景残す「小野.勝蓮花物語」

「小野勝蓮花物語制作委員会」写真集とDVD映像6巻を発刊
もう見ることのできない、2集落の貴重な記録
活動継続18年、伝えたい一途の想い、最終章が完成

3月22日の「ラッキーいとうのお気楽サンデー」はゲストに越前市の吉野瀬川ダム建設に伴う水没の村の原風景を残そうという活動を継続されてきた「小野勝蓮花物語制作委員会」の皆さんを迎えて、これまでに発刊された写真集とDVD映像全6巻の内容と、その活動などについての放送でした。
参加いただいたのは、映像撮影をされた「武生ビデオクラブ映游」の田中寿夫さん、高山勝美さん、ナレーション担当の田中吉美さんと今村里美さんでした。
皆さんからは、活動の中で知った地元の各種行事と歴史の深さ、村人たちの暮らしと仲の良さ、地元以外からみた新発見、また活動を通じて自分自身も得るものが多く楽しかった内容などが、にぎやかに笑顔の中で語られました。

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皆さんから紹介された主なお話は下記のとおりでした。 

● 「「小野勝蓮花物語制作委員会」は、吉野瀬川ダム建設に伴い水没移転となる「勝蓮花町」「小野町」の二つの集落の原風景を残そうと、平成14年に地元住民、白山地区の壮年グループ、写真クラブ、短歌クラブ、白山公民館、市民活動推進室に集うNPOたけふの団体、武生ビデオクラブ映游、地元出身者など約50名が参加して発足した。
事業名は「ふるさとの原風景を心に/小野.勝蓮花物語」として活動をスタートした。

● 写真班、映像班、物語班のグループ編成の中で、平成16年に写真集「ふるさとの原風景を心に.小野.勝蓮花物語」を300冊発刊し、平成22年には映像編「勝蓮花」DVDを発刊。その後、先日の最終章まで映像編「小野町」のDVD5巻を制作してきた。

● 最初の写真集では、見事な写真の数々に加え、それに合った短歌が詠まれ、歴史、写真、文化の余韻があふれるものとなり、地元の方々から制作委員メンバーに喜びの声が寄せられて嬉しかった。その中には二つの集落のすべての家と屋号も掲載されており、現在は何も残っていないので、とても貴重なものとなった。

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「撮るものは何もないわ!」と聞いたが、魅力満載の村だった
御日待 釈迦講 虫供養 石仏群 全戸の屋号など完全収録
圧巻は「金毘羅宮.神明神社のご神体遷座」闇の中で荘厳に
今も残る「勝蓮花の滝」、ぜひ一度、お勧めの観光スポット

  ● 映像DVDは、発足の際に「武生ビデオクラブ映游」の中に小野町の方もおられて撮り始めていると聞きクラブとして取り組み始めた。最初は地元の方から「撮るものは何もないわ」と言われたが、それは地元の人には当たり前すぎるものでも、外部からの視点では新発見と魅力多い伝統行事や風景がいっぱいだった。

● その中でも、正月に各世帯の男たちが集まり天照皇大神に一年の平安を祈願する神事と会食をする「御日待」では、朝食や味噌汁も男性だけで作るという行事だった。
一方「釈迦講」という行事は世帯から女性一人つずつが集まり、鐘を鳴らして御詠歌をうたい、その後に現代の「女子会」のような情報交換と親睦を深めるものだった。使用する「鈴と鉦」は代々に引き継がれる物だった。

● 特に印象深い出来ごとに地元の金比羅宮と神明神社遷座の行事があった。古代より遷座は夜の闇の中で蝋燭の灯の下に行われており、今回の遷座もその形通りに行われ、闇の中のご神体の移しは誰にも見えず神聖で厳かな雰囲気は生涯に経験できないもので感激した。撮影したものの一台のカメラには暗くて何も映っていなかった。神主さんはマスクしてご神体を包み、木箱に移し、それを区民が二人で担いだり抱き上げながらの移行だった。

● 「虫供養」は7月23日頃、お坊さんの読経の下で虫や獣類の供養が行われる行事だった。市内の大虫神社では虫を退散させる神事があり、新保町でも「虫送り」の行事が残っているが、「虫供養」は亡くなった虫の供養という点が興味深いものだった。

● 地区は街道沿いということもあり多くの「石仏」が各地に祀られており、鎌倉時代日蓮上人の弟子が彫ったという念仏が示されているお題目岩があり、不動明王が祀られている水飲み場では早朝に区民が集まりゴザを敷いて祈る行事もあったと聞いた。

● 全体の演出企画はビデオクラブ映游だったが、編集後の映像に合わせてのナレーションは地域の歴史や、神事、仏教、人々の暮らし、伝説など色んな知識が求められ、その原稿づくりは大変だった。白山村史や地域の人が作っていた書籍など多くを参考にした。初めて知ることも多く、地元で育った者でも新発見や勉強になり楽しかった。

● 18年も継続できたのは、メンバーが仲良く、無理をせず、そして何よりも、ダムに水没する二つの村の原風景を記録に残し、村の人たちや次の世代に残したいという一途の想いだった。また、自分たちにとっても新たな歴史や行事、風景などを感じることが出来たのも続けられた要因の一つだった。小野という地名は「小野妹子」という超有名人と関係があるとの伝説も聞いて驚いた。

● 地元の方へのインタビューでは、皆さんの若いころの川遊びや神社境内での映画会、お祭りのもようと合わせ、青年団として不満をもった家への肥桶放置など今だからこそ聞ける面白い話もいっぱいだった。最初は地元の方と緊張した関係もあったが時間と共に近くなっていった感じで撮影にも力が入った。

● 二つの集落の現在は一軒の家もなく寂しいが、発刊された写真集とビデオにはいつまでもそれらの原風景が残され、遷座した神々は神山地区の「新小野町」の新たな神殿に祀られている。「御日待」「虫供養」「地蔵祭り」など、ビデオに残っている幾つもの行事もしっかりと受け継がれ、新小野町の集会場には元の神社の神木で作られた大きな衝立も飾られている。

● 18年の活動時間と、財政的な個人負担も多かったが、この活動をやって本当に良かったと思っている。今も残っている自然風景としては、水量豊かな水しぶきを見せてくれる「勝蓮花の滝」はお勧めスポット、白山振興会が見学道も整備してくれたので、ぜひ一度みてほしい。
写真集も映像版のDVDも、越前市の図書館や地元関係の公民館に置かれているので、多くの方に見てほしい